みなさんこんにちは、青山キリカです。
今回取り上げたいテーマはずばり、Ryzen7 6800U。
Ryzen7 6800Uはモバイル機器向けのCPUとしては破格のスペックで、AAA級のゲームやクリエイティブな作業も難なくこなすと言われています。
自分はメインPCがゲーミングノートで、サブ機としてUMPCを持っている小型ガジェットマニア。より小さいガジェットを日夜追いかける中、「Ryzen7 6800Uでパワーが足りるなら、ゲーミングノートパソコンすら手放してUMPCをメイン端末にしちゃえるのでは?」という疑問が発生。
じゃあ、Ryzen7 6800Uの実力をその目で確かめてみよう!
ということで、今回はRyzen7 6800Uをその他のモバイル機器と比較しその強みを見ていきます。
\結論はこちら/
- 単純比較ではGPU搭載機に敵わないものの、静音性や省電力さに優れる
- TDPとベンチマークは単純に比例しないため、ゲームごとに最適なTDPを探すとより便利
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Ryzen7 6800Uのベンチマークで実力を検証する
テストの条件
読者と投稿者にイメージの相違が生まれないよう、テストに利用した条件は片っ端から全て公開します。
Ryzen7 6800Uを搭載した端末は無数にありますが、検証には手持ちのGPD WIN4 2023を用いました。
メモリは32GBのモデルですが、BIOSメニューよりメモリのうち16GBを固定でVRAMに割り当てています。なので、メモリ16GB、VRAM16GBという状態です。
TDPの設定にはプリインストールされている「MotionAssistant(体感助手)」を利用。TDP設定時は中央のプリセットをクリックして設定し、「MotionAssistant(体感助手)」で行える他の設定は一切触っていません。
また、常に60Wで電源供給を行なっています。
FFXVベンチマーク
パソコンのベンチマークと言ったらまっさきにこれが思いつく人も多いであろう大人気ベンチマークツール、FFXVベンチマーク。今回はこれをGPD WIN4 2023でプリセットとして利用できる各TDP毎にスコア比較します。
条件は「標準品質」「1920×1080」「ボーダレス」とし、テスト中は60Wで給電。また外部ディスプレイは繋がないものとします。
5W
まずはTDP 5W。プリセットで選べるTDPの値としては最小となります。
実行中はBGMすらぷつぷつと途切れる実行速度で、ゲームを楽しむどころの話ではないです。映像も時折停止するため、これでアクションゲームは無理です…。
ただ、5Wという強い電力制限の中でここまで動作することがむしろ驚きでした。実行中もファンはほぼ回らず無音でしたし、本体背面が熱を持つ様子もありません。FFXVよりもパワーを食わない2Dグラフィックのゲームであれば、TDPを5Wに抑え、長時間ゲームを続ける運用も大いにアリですね。
スコアは1333。動作困難の評価でした。
28W
大きく飛んでプリセット内では一番の電力喰らいであるTDP 28Wを選択。TDP 5Wでの検証直後なのであまりにもその実効速度に感動を覚えています。どのシーンでも引っかかりなく動作し、まさに快適そのもの。UMPCって進化したんだなぁ…。
さすがにファンの音は大きく聞こえるものの、ドライヤーの最小風量よりも遥かに小さいくらいの音です。本体上部からは明らかに温度を感じる熱が出るものの、これくらいならば本体に大きな負荷はかかっていないなと感じます。
スコアは3673。普通評価でした。
15W
続いて、だいたい平均程度の値となるTDP 15Wを選択。プリセットの中でも真ん中に位置するため、とりあえずこのTDPを選択する場面も多いのではないでしょうか。
実行中の感想は、「あれ?28Wと同じくらい快適では?」という評価でした。映像はTDP 28Wでの実行時と同程度で、その割にはほとんどファンが回りません。快適さが最も高く、FFXVをGPD WIN4で楽しむならばこのTDPがベストかなという感想を持ちました。
結果は3020。とにかくパフォーマンスに優れる良い設定でした。
8W
5Wでは電力制限が強く、15Wではかなり快適に遊べるということで、その間の8Wも検証してみることにしました。
電力制限を強くするとベンチマーク起動までの待ち時間がかなり長くなります。また、セキュリティ上、ベンチマークの間ずっと放っておいた際に自動でロックが掛かるよう設定しているのですが、ベンチマーク中は指紋認証でのロック解除→復帰までの時間もかなりもっさりしていました。ベンチマーク処理にフルパワーを使ってしまっているため、ロック解除にパワーが出せないんですね。
結果は1344で動作困難。TDP5Wとほぼ同じスコアですね。FFXVプレイ時にはあえてこのTDPを選択する理由はなさそうです。
12W
同様に5Wと15Wの間にある12Wのプリセットも試してみましょう。
結果は2311で「重い」という評価でした。5W付近と15W付近のちょうど間くらいという妥当なスコアでした。
もっと段階的に快適さが上がるかと思っていましたが、特定のラインで急にスコアが向上しています。5Wや8Wの設定から15W設定や12W設定に切り替えた途端に快適さがぐんと向上します。
ゲームによってこのラインは異なると思うので、お気に入りのゲームではいくつかのTDPを試し、電力量とパフォーマンスのバランスが良い数値を探すと真価を発揮しそうですね。
メインのノートパソコンと比較する
比較対象としてメインノートPCであるDell G16でも同じものを動かしてみます。
ざっくり言うと13thのCore i9とRTX4070 Laptopを搭載したノートパソコンです。
結果は15604ポイントで非常に快適。ノートパソコンといえど、GPU搭載のゲーミング特化PCは非常にパワフルでした。
330Wの超ハイパワーACアダプタがないとろくに動かないということもあり、やはり電力はパワーに直結するという結果が見えました。
FilmoraでGPUを使った動画出力の高速化を試す
グラフィック処理で気になるのはゲーム関連だけではありません。クリエイティブな要素で小型の端末を常に持ち歩きたいというニーズもあると思います。
例えば、外出先でVLLOGの動画編集を行うだとか、写真をその場でRAW現像したいという目的のためにUMPCに興味が出る方も多いと思います。
UMPCには通常サイズのSDカードを読み込めるものもあり、そういったものは「カメラマンが撮った写真を現場で即座に確認する」というニーズに応えたものだと思うよ
今回はそういったクリエイティブな側面のテストもしてみましょう。
検証の手段として動画編集ソフトのFilmoraを使います。
Filmoraの使い方や魅力はこちらの記事でご紹介しています。よかったら併せてお楽しみください。
FilmoraにはGPUを使った高速なレンダリング機能(ハードウェアアクセラレーション)が搭載されています。この機能を働かせた際、どれほど速度が早くなるかでGPUの性能を見てみたいと思います。
手持ちの動画に適当なエフェクトを一つだけ重ねた動画の出力時間を見てみます。動画はおおよそ30分になるまで無限に繰り返し、出力サイズの想定は1.7GB程度でした。
早速エンコード開始。GPD WIN4のTDPは前の検証でパフォーマンスの良さを感じた15Wに設定しています。
タスクマネージャーで見てみますが、エンコード中もGPUをほとんど使っている形跡がありません。
結果は19分。もう少し速いかと期待していましたが、結果はそれなり。とはいえファンもそれほど回っていなく静かだったので、例えば新幹線の中で旅行動画のエンコードを行うというのも可能かもしれません。速さと静音性のバランスをとっているかなと感じました。
比較としてメインPCでも同じ作業をしてみましょう。メインPC Dell G16はRTX4070搭載。FilmoraのGPUチェックでもRTX4070と表示され、きちんと認識しています。
ほぼ同じ条件の動画を作成し、エンコード開始。
こちらはタスクマネージャーで確認したところ、がっつりGPUを活用している様子が見られました。
結果はぴったり10分。ファンが轟音で唸っていたためかなりうるさかったです。
タイムは以下のようになりました。
GPD WIN 4 | 19分 |
Dell G16 | 10分 |
速さを求めるのであれば専門的なGPUを搭載したものにはかなわないけど、+90%程度の差しか生まれないのであれば、音の大きさや省電力性などのバランスを加味するとRyzen7 6800Uはかなり善戦しているなぁと感じます。
まとめ
ということで今回は、簡単にはなりましたがRyzen7 6800Uの性能を掘り下げ、そのパワーを見てきました。
結論としては
- 単純比較ではGPU搭載機に敵わないものの、静音性や省電力さに優れる
- TDPとベンチマークは単純に比例しないため、ゲームごとに最適なTDPを探すとより便利
ということがわかりました。
そもそも、携帯ゲーム機程度のサイズの端末がベンチマークで戦いを挑めるようになった時点でかなり驚きです。
家の中でメインとして使うには最適解とは言えないですが、ひとたび家の外に出る際には静音性や省電力であることがそのまま強みとなって現れてきます。UMPC一台ですべてを完結させるのはまだどうしても難しいと思いますが、家の外で使うサブパソコンとしてはかなり良い選択肢なのではないでしょうか。